昨年末になりますが、時々、インタビューさせて頂いている、ニューヨーク市立大学の霍見芳浩教授からある原稿が郵送されてきました。『ニューリーダー』という雑誌の2010年12月号に掲載されたものになります。一般書店では売られていない雑誌なので、読まれていない方も多いと思います。「ブログへの転載はご自由に」という霍見教授のメモも入っていましたので、ここで、皆様とシェアできたらと思い、転載致します。是非、読んでみて下さいませ。
 
奈落へと向かう米国と日米関係の仕切り直し
by ニューヨーク市立大学霍見芳浩教授

ティー・パーティ(米国)病

 11月2日の中間選挙で、共和党は連邦下院を奪回した。民主党はかろうじて連邦上院を守ったが、本誌10月号の私のコラム「再浮上する新自由主義の妄想」で警告した通りの結果である。このままでは、アメリカ分裂国の政治、経済、社会の麻痺は一段と深まる。共和党は下院の予算権を駆使し、金融と医療保険改革を骨抜きにし、オバマ民主党の財政出動による景気対策を徹底的に拒む。ドル安円高と原油高は進み、ブッシュ前政権と小泉前政権が日米それぞれ残した製造業空洞化による雇用破壊の圧力は高まる。しかし、菅首相にとっては、日米経済の相互扶助による起死回生と中国けん制の好機でもある。 
 共和党勝利は、極右思想同類のティー・パーティ集団に身を任せたからだった。この集団の名は、「もう税金は十分に取られている」の頭文字の語呂合わせで、昔、英宗主国からの独立運動に火をつけた植民地茶税反対運動の故事にあやかったもの。しかし、今のティー・パーティの実体は、有色人種を嫌う白人至上主義の南部白人と中西部の心情南部白人を主体とする反政府と反税のアーナキスト(無政府主義者)集団である。
 建国以来、米国社会では、民主主義の対極にあるこうした風潮が周期的に台頭し、米国民の不安増大につけこみ、ヒットラーに似た扇動者や神がかった巫女を押し立てては、米国社会を奈落の暗黒の淵へ誘う。米国社会の思想と行動の源流の中に、内部破綻の種として、奴隷社会に根ざした白人至上主義、反知性主義(嘘も方便の独善と迷信)、そして、排外的帝国主義(弱者いじめ)があるからである。これらのDNAを最も強く持つ南部白人は、南北戦争で負けて、奴隷解放など、北部人の政治に屈して来た恨みを今でもくすぶらせている。
 共和党とティー・パーティ連合は、「社会主義者のオバマは医療の国有化を狙っている」と大ウソを広げ、「医療国有化は財政赤字を拡大させ、庶民の大増税を招く」とのこれまた大ウソを南部白人と心情南部白人に信じ込ませてしまった。彼らは、医療保険無しの多くは、有色人種のワーキング・プアと思い込んでいるから、「オバマ医療改革反対」の合言葉は、オバマ大統領に代表される有色人種と北部のエリートへの反感の格好の煙幕となった。

オバマ大統領の誤算

 ティー・パーティと共和党の攻勢に火を付けたのは、ウォール街に遠慮したオバマ大統領の大誤算だった。ブッシュ前大統領と共和党が引き出した「ブッシュ恐慌」のために、オバマ大統領の就任前から、米国の公的失業率は10%を超え、国民の体感失業率(非自発的失業者と非自発的就業者を加えたもの)は20%を超えていた。
 国民大衆の体感では、自分の家族や友人の中に長期失業者がおり、「明日は我が身か」との恐怖に取りつかれている。大学新卒者たちは「大学を出たけれど」の悲哀にさいなまれている。「真面目に働けば、暮らし向きも良くなり、失業の心配もない」という「アメリカの夢」は消えた。共和党による株主至上主義の政策は、日本の派遣切り同様に企業社員のヤミクモな切り捨てを促して製造業を空洞化させ、財政出動による景気刺激と雇用創出機能を喪失させた。
 08年の大統領選で、国民の多くはオバマ候補の「雇用増大」の公約を信じた。しかし、オバマ大統領は、1930年代に大恐慌清算に果敢に取り組んだフランクリン・ルーズベルト大統領(民主党)と異なり、チビチビ小出しの雇用対策に終始してきた。加えて、ブッシュ恐慌の元凶である銀行と証券の腐敗と不良債権清算では、小泉・竹中改悪と同様に、公的資金を大量に投入したのに経営責任を不問にし、ブッシュ前政権の金融界甘やかしを継続して、国民の怒りを招いた。
 一方、雇用増大と好景気維持の時しか国民医療皆保険などの社会改革はできないとの歴史の教訓を無視した。「まず、雇用拡大を」との国民の願いよりも、米国百年来の念願の国民医療皆保険をオバマは優先させた。デトロイトの救済再生が示すように、産業再生には必要だとしても、保険業界と組んだ共和党の妨害に屈して、何が改善されたのか、国民には見えにくいものを通すのに一年半もかかった。
 この間、体感失業率は20%強が続き、「国民の不安に鈍感」という共和党とティー・パーティのオバマ批判が広がった。失業の恐怖は大衆に広く浸透するが、医療保険なしの恐怖はワーキング・プアに限られている。「オバマは俺たちの税金をアフリカ系やラテン系に加えて、あのイスラムのために使う」との共和党とティー・パーティのデマとともに「オバマはケニア生まれの回教徒で反米主義者」とのデマも広げられた。

日本病と米国病の克服

 米国共和党は「経済再建で雇用創出」と口にするが、その方策はブッシュ恐慌を作り出したものである。これに、ティー・パーティが求める政府支出の大幅削減、つまり、インフラ投資削減と警官と公立学校の教職員を含めた公務員の大量首切りが実施されると、米国景気は奈落へ向かう。日本民主党も、日本のギリシャ化の心配は無用なのに、自民党政権が作り出した巨額の財政赤字におびえて、賞味期限切れの選挙マニフェストの小出しの実施では、小泉純一郎・竹中平蔵作の「失われた20年と格差分裂社会」から抜け出せない。
 日米共に起死回生に必要なのは、首脳のぶれない大胆なリーダーシップである。この実行策は、本誌11月号の私のコラムで示した四大産業政策の同時進行である。日本の財源は消費税値上げではなく、円高対策にもなる金融取引税と国民の健康に不可欠のタバコ税の大幅値上げ(一箱20本千円)である。公共物であるテレビ電波の競売リースに国債償還期限の延長など、知恵はいくつもある。
 日米ともに、安全保障と製造産業再生のアキレス腱は、先きの尖閣諸島をめぐる日中紛争が中国で行ったレア・レース(高度電子部品の素材)の日米への輸出禁止である。10月末、菅首相はハノイでの首脳外交でベトナムのレア・レースの共同開発に合意した。中国けん制と日本経済再生の一石二鳥の快挙だった。続いて、中国に潰された米国のレア・レースの再開発の日米共同プロジェクトを実現させて、オバマ大統領の雇用と輸出増大策に協力すれば、日米相互扶助の起死回生が両国民の目に止る。共和党とティー・パーティ連合の狙いは、経済衰退を続けて、再来年のオバマ再選を拒むことである。日米協力でこれを挫くのが日本のためにも世界のためにもなる。

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