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G2のサイトに、『ビッグ・スイッチ』の著者ニコラス・カー氏をインタビューした記事がアップされましたので、ブログにも掲載しま~す。

G2の記事

米国インターネットご意見番 ニコラス・カー
『フリー』はユートピア信仰にすぎない
ニコラス・カー

クリス・アンダーソン氏は、著書のなかで、デジタルの世界では、コンテンツ(商品)の配送コストはゼロに近づき、多くのモノが無料で配られていると書いています。確かに、フェイスブックやツイッターのようなサービスから、ユーチューブ上の映像や音楽に至るまで、様々なモノが無料で手に入れられるようになりました。そして、この「フリー」の動きはますます進んでいくことでしょう。
クリスのことは尊敬していますし、フリーは重要なトレンドだと思います。問題は、彼がフリーの良い点ばかりを強調し、起こり得るネガティブな点については議論を避けているように思えることです。クリスは、フリーの世界を、多くの人々が豊富なサービスや情報を、いくらでも無料で得られるようなユートピアだと捉えているようです。
しかし、本当にそんな世界があり得るでしょうか。アマチュアがブログを書いたり、ビデオをアップロードしたりすること自体は素晴らしいことです。しかし、アマチュアではできないことがあり、それをプロと呼ばれる人が、お金と時間と才能をかけて良質のモノを生み出している。良質の新聞やジャーナリズム、本、映画、音楽を欲するのなら、プロにその対価を支払わなくてはならないと私は思います。彼は、そういう良質の商品に対して、対価を支払うことの重要性を過小評価しているのではないでしょうか? プロと呼ばれている人々が、良質なモノを生み出すことで、生計を立てているということを。
たとえば、写真掲載サイトの「フリッカー」では使用料無料の写真が山ほどデータベース化されています。そして、いまでは雑誌社も「フリッカー」にアクセスして、無料で写真をダウンロードし掲載するようになりました。そのため、多くのフォトジャーナリストが失業しているという状況があります。「フリッカー」にあるのはほとんどアマチュアの撮影した写真ですが、多少質が落ちてもいいと考えれば、雑誌の誌面に掲載できるレベルのものもある。こういうアマチュアクリエイターの出現で、本当に質の高いものを生み出すカメラマン、ライター、ミュージシャンなどのプロが職を失えば、当然ながら質の高いものはどんどん世の中から消えていくことになります。しかも、デジタルコンテンツのコピーはフリーに作ることができるため、デジタルコンテンツそのものが無料で当然だと信じ始めている人が増えている。そうした傾向が、ますます質の高いものやプロの存在を消し去っていくのです。
わかりやすい一例が、いま、フリーの蔓延によって、存続の危機に瀕しているアメリカの新聞業界です。収入の一つの柱だった企業広告はウェブ媒体に動いているし、個人広告は「クレイグスリスト」という無料の広告サイトに奪われている。もう一つの収入の柱である購読料も、オンラインの無料ニュースを読む人が増えたので激減しています。
新聞社は存続の道を模索し、フリーミアムのビジネスモデルを採用しようとしていますが、このモデルはすべての新聞社に有効なわけではなく、少数のスペシャルな情報を提供する新聞社しか生き残れないでしょう。このスペシャルな情報に対して、対価を支払う価値があると考えるユーザーがどれだけいるかが重要です。具体的に言えば、フリーミアムは、「フィナンシャル・タイムズ」や「ウォール・ストリート・ジャーナル」などの経済紙では有効でしょう。来年1月から電子版記事を有料化すると発表したばかりの「ニューヨーク・タイムズ」では有効かどうかはまだ未知数です。読者の中には、有料なら他の無料のニュースを読もうという人も出てくると考えられます。

別の観点から見たフリーの弊害も指摘しておきます。メディアコンテンツの無料化は「持つもの」と「持たざるもの」の差を生み出しています。グーグルが何ビリオン(何千億円)も投資してデータセンターを建設し、IT企業はコンピュータやソフトをパッケージで販売するのではなく、グーグルのデータセンターからオンラインで提供する形態に移行しつつあります。いわゆるクラウドコンピューティングモデルと呼ばれる形態です。このクラウド化によって、少ない従業員で運営していけるようになった企業が、巨大マーケットにサービスを提供するようになりました。そのため、儲けが少数の人にしか行かないようになっています。このトレンドは今後も確実に続き、富はより少数の人々に集中していくでしょう。

電子書籍が思考能力を奪う

先ほど新聞社の現状をお話ししましたが、キンドルなどの電子書籍リーダーや電子書籍の急成長で、出版社はこれから数年は厳しい状況になります。アマゾンは、出版社を不要なミドルマン(仲介者)だと見なし、出版社を閉め出して、直接、作家と取り引きしようとしています。確かに、出版社を閉め出せば、アマゾンは作家と利益を分ければいいので、両者は大儲けできるかもしれません。ただし、この場合、作家といっても、人気作家でなくてはなりません。
アマゾンにとって、作家はあくまでも投資の対象ですから、若くて無名の作家にはリスクを感じるはずです。だから、アマゾンにとって必要なのは、すでに人気のある作家だけです。そうなると、またしても富は、アマゾンと人気作家だけに集中していくことになります。出版社は倒産し、無名の若手作家は世に出られない。世に出たきっかけは、違法な海賊版だったという状況も起きてくることでしょう。
私が最も恐れていることは、電子書籍が成長して、電子書籍リーダーで読書する人が増えると、深い思考能力が失われてしまうということです。キンドルもiPadもウェブサーフィンができて、ウィキペディアやグーグルにも行けるし、途中で、メールやツイッターなどのいろいろな邪魔が入って来るので、ユーザーは文章に集中できなくなります。実際に、ある科学者は、電子書籍のテキストと紙の本のテキストを人に読ませて比較した時、電子書籍のテキストのほうが理解度が下がることを発見しました。だから、私はキンドルを使いません。この詳細については今春アメリカで発売する『ザ・シャローズ インターネットが脳にしていること』という本にも詳しく書きました(日本では青土社から刊行予定)。
私はフリーに代表されるような、インターネット文化がユートピアで、人はネットで多くの時間を費やすべきだとする考え方には反対です。人が対面してコミュニケーションをとることの大切さや、紙の本を読むことの大切さも主張されるべきだと思います。ネットには利点もありますが、述べてきたように危険もたくさん潜んでいます。そして何より重要なのは、人間の持つ思慮深さを、ネットによって犠牲にすべきではないということなのです。
(取材・構成/飯塚真紀子)

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コメント
Re: 科学的実験?
コメント、ありがとうございます。
返信が遅れて申し訳ありません。
鋭いご指摘をありがとうございます。
科学的データについては、ニコラス・カー氏の著書に書かれていますが、取材時は発売前だったため、詳細については触れませんでした。このあたりはまた何かのメディアで紹介できたらと考えております。
しかし、科学的な実験はいったい何をもって科学的とするのか、そのあたりも判然としないところが多いですよね。暴力的なビデオゲームが子供の脳に与える影響なども、長い間研究されていますが、果たして科学的データに基づいた結果が得られるのか難しいところがあるようです。

> 「ある科学者は、電子書籍のテキストと紙の本のテキストを人に読ませて比較した時、電子書籍のテキストのほうが理解度が下がることを発見しました。」
> という箇所が気になりました。何という名の科学者が、どのような実験をしたのかが不明なのはもちろんですが、まだ電子書籍よりも紙のテキストが一般的な現時点では、科学的な比較実験は不可能だと思います。10年後、いや5年後でもいいでしょう、電子書籍が普及した時点で再実験すべきではないでしょうか。……といった点を、インタビュアーとして突っ込んでいただきたかったです。
2010/07/15(Thu) 09:01 | URL | makikolove | 【編集
科学的実験?
「ある科学者は、電子書籍のテキストと紙の本のテキストを人に読ませて比較した時、電子書籍のテキストのほうが理解度が下がることを発見しました。」
という箇所が気になりました。何という名の科学者が、どのような実験をしたのかが不明なのはもちろんですが、まだ電子書籍よりも紙のテキストが一般的な現時点では、科学的な比較実験は不可能だと思います。10年後、いや5年後でもいいでしょう、電子書籍が普及した時点で再実験すべきではないでしょうか。……といった点を、インタビュアーとして突っ込んでいただきたかったです。
2010/05/25(Tue) 21:29 | URL |  | 【編集
Re: free materials
ハッピーの母さんへ、
ご無沙汰しております。
そうなんでよね、フリーと一口に言っても、結局は、フリーの周辺にあるもの、付属するもので商売するためのマーケティング戦略なので、フリーということに乗せられない方がいいですよね。
これだけヴァーチャルコミュニケーションが発達している今こそ、リアルな生身の人間同士が向かい合って対話することって、大事だと思います。

> ご無沙汰しております。 フリーと書かれているものの中で、よーく調べるとそうでないものもあるので要注意だと思います。 フリーですよと書かれているとあるアプリをよーくみたら、excpetional の項目が書いてありました。 こういうのってフリー、フリーといわれる世界での落とし穴だなって痛感。
> と言って、あまり新しい物には恐怖感がある私です。 
> ペーパーで読む本、人と直接会ってのコミュニケーションがやはり最後には一番大切なことだろうと思います。
2010/05/21(Fri) 19:49 | URL | makikolove | 【編集
free materials
ご無沙汰しております。 フリーと書かれているものの中で、よーく調べるとそうでないものもあるので要注意だと思います。 フリーですよと書かれているとあるアプリをよーくみたら、excpetional の項目が書いてありました。 こういうのってフリー、フリーといわれる世界での落とし穴だなって痛感。
と言って、あまり新しい物には恐怖感がある私です。 
ペーパーで読む本、人と直接会ってのコミュニケーションがやはり最後には一番大切なことだろうと思います。
2010/05/19(Wed) 17:36 | URL | ハッピーの母より | 【編集
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